Short story

「クリスマスの朝にみた夢」

クリスマスの朝に見た夢

あらまあ、こんなこともあるのかと、
12月のカレンダーを横目で見ながら、鏡を覗き込んだ。

これはとある朝の出来事で、私にリボンが巻きついている。
それも赤いリボン。
驚いて、きっとこれは夢なのだと、
だけど楽しそうな夢だから、覚めないようにそっと頬を撫でた。

あらあら、
首の辺りには値札らしきものと、メッセージカードが付いていて、どうやら私は売り物らしい。

カレンダー見ると今日は12月24日。

ああそうか、私はクリスマスプレゼントね!

そうか、そうか、それならおめかししなくちゃね。

鏡台の前に立って、めったに塗らない口紅をひとぬり。
お姫様になったみたい。

ワンワンと愛犬のチコが私を迎えに来た。
あらあら口に銀貨をくわえているから、チコは私をお買い上げね。
思いもよらぬ展開に私はふふふと笑った。

そして私は、チコと踊っていた。
くるくるくるくる踊っていた。

そして、最後にチコは一声悲しそうにクンと鳴いたのだ。

目覚めたときには、チコは私の頭の上の写真たての中で幼い私に抱かれていた。

私の目は涙でいっぱいだった。
写真たての裏に挟んであったカードには
10年前の西暦と「Merry Christmas」と書かれている。

チコは私が大好きで、私のそばにいつもいたから・・・。
「チコ」
と思わず呼んだ。

昨夜、ベットの上で冷たくなっているチコを私は何度もあたためようと、
一緒に毛布にくるまって眠った。


クリスマスは、私はチコと朝までずっと、すっと踊り続けていた。

「クリスマスの朝にみた夢」

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